※写真、水揚げされたヨシキリザメ=2016年8月19日:苫小牧民報より
苫小牧沖でヨシキリザメ捕獲 毛ガニ漁への影響心配
苫小牧沖で19日、体長約2mのヨシキリザメ1匹が水揚げされた。漁業関係者によると、サメは毛ガニ漁で使用するカニ籠に頭から突っ込んで死んだ状態で捕獲。苫小牧沖では、昨年も同様の事案が発生しており、漁期終盤を迎えた毛ガニ漁への影響を心配する声もある。
メジロザメ目メジロザメ科のヨシキリザメは、国内では太平洋側の温暖な海域に広く生息する。サメの水揚げ日本一の宮城県気仙沼港で最も多く水揚げされ、高級食材フカヒレとしても珍重。どう猛な性格で漁具だけでなく、人を襲う可能性もある。
サメの生態に詳しい、岩手大学三陸水産研究センターの後藤友明准教授は、昨年に引き続き苫小牧沖の海水温の高さに注目する。「日本海側から津軽海峡を通って張り出した暖流(津軽暖流)の影響で、えりも以西海域の水温は、例年より2~3度高い20度ほどで推移している」と指摘。「水温20~25度の海域に生息するヨシキリザメに適した環境になり、三陸~道南・太平洋を行き来できる状況が生まれている」と分析する。加えて、道南・太平洋沖ではイカ漁が本格化。「サメの餌となるイカが漁船の集魚灯に集まり、ヨシキリザメを引き寄せてしまっている可能性もある」と推測する。
苫小牧漁業協同組合(磯﨑好一組合長)では、昨年、ヨシキリザメとみられるサメによる漁具被害が8~9月以降に複数発生。今年に入って確認できたのは、今回が初めて。毛ガニ漁が不漁のまま終盤を迎え、9月上旬から主力の秋サケ定置網漁がスタートするタイミングに磯﨑組合長は「次から次へ心配は尽きない」と語る。
19日現在、胆振・日高管内の漁協で、ヨシキリザメとみられる目撃情報が確認できたのは、苫小牧以外では近隣の鵡川漁協(むかわ町)のみ。同漁協の担当者は「直接的な被害はないが、今月に入って漁業者から沖合で大型のサメを目撃した情報が寄せられている」と話し、漁業者に注意を呼び掛けている。
※2016年8月20日の苫小牧民報より