船の騒音がシャチの生息数にかなりの影響を与えていると研究者が発表しました。
絶滅危惧にさらされている海洋哺乳類の獲物を追跡する方向感覚を狂わせていると述べています。
2016年2月2日、PeerJ誌(the journal PeerJ)で紹介されたこの調査結果は、海洋学者であり環境科学者であるScott Veirs氏の分析に基づいています。
研究目的は、船の騒音がシャチに悪影響を与えているか、また、その他、ザトウクジラ、シロナガスクジラ、コククジラやヒゲクジラなどにも関係するかを判断することでした。
以前の研究では、騒音はヒゲクジラのコミュニケーションや、遊泳運動を阻害する働きがあることを示していました。これは、彼らの聴覚周波数が、ちょうど船がたてる音(低い周波数音)と同じであるためです。
例えば、高い反響定位能力(エコーロケーション)を持つアカボウクジラは、船の騒音のもとでは、獲物を捉える可能性が50%未満になります。
他のクジラやイルカもまた、船の騒音にさらされた後、相当な負担になっているように思われます。
アメリカ、ワシントン州付近のハロー海峡を航行する約1,600隻の船舶の騒音を調査したところ、船には低周波音を出すだけでなく、約2万ヘルツに達する中・高周波数音のものもあることが分かりました。
これらは、シャチが最も反応する音であり、聴く可能性が最も高い音であり、気が散り邪魔され、その結果、シャチは、獲物を識別したり、海岸から距離を置くことなどがさらに困難になると推測されます。
そのような、反響定位能力のある海洋哺乳類の混乱は、とりわけワシントン州南部の絶滅危惧にあるシャチの生息数に深刻な影響を与えると研究者は警告しています。
また、同じ騒音のリスクが、浅い水深の場所を通る船によって、沿岸に生息するシャチにも影響を与えています。
研究者は、すべての船の騒音が同じ影響を与えているわけではなく、解決策はあるとしています。
より正確には、海軍の船は、商業船に比べてはるかに騒音が少ないということです。
騒音に起因する障害を制限するために、軍用の技術を採用することにより、商業船の騒音を低減することが可能であることを示しています。
また、船の速度を減速することも効果があり、例えば、およそ1ノット(毎時1海里)速度を落とすことによって、船の騒音は、およそ1デシベル減ります。したがって、約6ノット速度を抑制することにより、騒音は以前の半分ほどになるのです。
研究者の指摘するように、船の騒音公害を改善することは、他の要因(※)でも心配されているシャチの、生息数を維持することに不可欠なのです。
※他の要因:
捕鯨、気候変動、ポリ塩化ビフェニル(PCB)の影響など
(英文記事:2016年2月4日 BY DAVID KELLEN)
※lighthousenewsdailyより
※参考:PeerJ
※関連記事:シャチの親子 ドローンで撮影 アメリカ サン・ファン諸島沖 2015年10月27日
(英文記事:2016年2月4日 BY DAVID KELLEN)
※lighthousenewsdailyより
※参考:PeerJ
※関連記事:シャチの親子 ドローンで撮影 アメリカ サン・ファン諸島沖 2015年10月27日
※関連記事:死因不明の子シャチ カナダのトフィーノ近くで見つかる CANADIAN PRESS 2015年12月31日
※関連記事:欧州のシャチに絶滅の恐れ、PCB汚染で繁殖力ゼロに 研究 AFPBB News 2016年1月18日
※関連記事:欧州のシャチなど海洋哺乳類の脂肪中のPCB濃度が有害なレベルに達している Scientific Reports 2016年1月15日