【遺伝】シャチのゲノムと生態学的特性と社会進化 Nature Communications

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Nature Communications

※画像:Nature Communicationsより

 シャチの行動と社会構造の進化は、少数の創始者グループが新しい環境に進出することを特徴としていることを報告する論文が、今週掲載される。これは、約50頭のシャチの全ゲノム塩基配列に基づいた研究であり、シャチの個体群史の理解を前進させるものといえる。


 イルカの仲間では最大の種であるシャチ(Orcinus orca)は、社会性の高い動物で、南極域から北極域までの幅広い地域を生息地としている。そして、いくつかの地域に生息するシャチは、狭い生態学的ニッチの利用に適応した食餌と狩猟の戦略に基づいて生態型という特殊化したグループに進化した。しかし、生態学的要因ではなく遺伝学的要因が行動と生態型の多様性に及ぼす影響は、これまでのところ明らかになっていない。

 今回、Andrew Footeたちは、北太平洋域と南極域の5つの生態型の約50頭のシャチのゲノム全体の塩基配列を解読、解析した。この研究では、シャチの生態型が全世界に放散するのに20万年もかからなかったという推定結果が得られた。Footeたちは、研究対象となった全ての生態型で、分岐後の個体数減少があってから拡大が起こったことを見いだした。これは、新しい下位分類群の出現に至る主要な進化シナリオの1つだ。今回の研究で得られたゲノムデータは、シャチの社会構造と狩猟行動の進化も反映していた。

 今回の研究は、社会的動物の進化が文化と遺伝子の相互作用によって影響を受ける過程に関する手掛かりをもたらしている。
(2016年6月1日Nature Communicationsの記事)

※この英語の原文はこちら
(Genome-culture coevolution promotes rapid divergence of killer whale ecotypes)

※「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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