※画像、仲谷北大名誉教授の近著:
サメのひみつ10より
「悪魔のサメ」の生態解明 仲谷北大名誉教授 魚類最速のあごの動き 瞬間的に獲物捕らえる
水深1,000m以上の深海にも生息する魚ミツクリザメの捕食行動を、サメ先生として知られる函館市西旭岡町2、北大名誉教授の仲谷一宏さん(71)=水産学=が解明した。このサメは泳ぐ速度が非常に遅く、深海でどのように餌を捕らえるのか分かっていなかった。仲谷さんは、ミツクリザメの獲物を捕らえるあごの動きが魚類最速で、瞬間的に餌を食べていることを明らかにした。
ミツクリザメは体長約3mに成長し、歯がむき出しで桃色の恐ろしげな容貌から「悪魔のサメ」とも呼ばれる。生態がほとんど分かっていなかったが、NHKが数年前に餌を食べるシーンを撮影。番組づくりに参加していた仲谷さんは映像を詳細に分析して動きを調べた。
その結果、捕食の際は《1》あごが120度近い角度まで開いて《2》下あごが大きく突き出し《3》あごを閉めて小魚などの餌を捕らえる―という動作を、約0.3秒で行うことが分かった。
下あごが突き出る速度は秒速3.14mで、これまで魚類最速だった、スズキ目に属するギジベラの同2.31mを上回る。
餌の少ない深海の魚類は一般的に、エネルギーの消耗を抑えた確実な捕食の形質に進化するとされる。仲谷さんは、ミツクリザメの捕食法は、この傾向が極めて顕著に表れていると考えている。
仲谷さんは「もともと浅い海に住んでいたサメが、どのように深海に適応したのかを解明した新発見と考えている。今後も生物の多様性を明らかにしていきたい」と話す。
研究結果は6月上旬、論文で公表。7月下旬に出版された近著『サメのひみつ10』(ブックマン社)でも一部紹介している。(矢崎弘之氏)
※2016年8月22日のどうしんより
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