サメ類の保護・管理のための日本の国内行動計画 水産庁HPより

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ワシントン条約附属書Ⅱに掲載されているサメ類
※上図、(別添3)ワシントン条約附属書Ⅱに掲載されているサメ類:

(ジンベエザメ 、ウバザメ 、ホホジロザメ 、ヨゴレ、アカシュモクザメ・ヒラシュモクザメ・シロシュモクザメ、ニシネズミザメ)


■サメ類の保護・管理のための日本の国内行動計画

平成13年2月(平成21年3月一部改正)(平成28年3月一部改正)
水産庁

1.序(理念と目的)
(1)我が国は、責任ある漁業国として、「漁業が人類に対する重要な食料供給の役割を担い、かつ、世界各国の国民の社会的・経済的福利を確保するための機能を有する重要な産業である」との国際社会の認識(食料安全保障のための漁業の持続的貢献に関する京都宣言及び行動計画)を確認するとともに、「海洋生物資源の保存と持続的な利用は、国家の義務とする」との国際合意(国連環境開発会議・アジェンダ 21 第 17 章)並びに食料安全保障に対する漁業の貢献の促進を求める「FAO 責任ある漁業の行動規範」を尊重している。
(2)我が国は、サメ類が重要な水産資源であること及び高次捕食者として海洋生態系において重要な役割を果たしていることを認識し、持続的な利用及びサメ個体の有効利用を成し遂げることを目標としている。また、サメ類は各国の様々な漁業により捕獲されていることから、資源評価結果に基づき、種毎及び系群毎に、かかる捕獲を適切に管理し、資源への悪影響を防止するべきであると認識している。さらに、サメ類が違法・無規制・無報告(IUU)漁業の対象となっていることを懸念している。

(3)このような状況の中、我が国は、1999 年に採択された「FAO サメ類保存管理のための国際行動計画」に基づき、サメ類の適切な保存及び管理のため、我が国の漁業によるサメ類資源への影響を客観的、科学的に解析し、国際的に合意された実施規範を勘案した、効果的かつ実行可能な国内行動計画を 2001 年に定めた。
(4)以来、本行動計画の実施により、サメ類資源に関する科学的知見・情報を収集し、正確な知見・情報に基づく合理的なサメ類資源の保存と持続的利用を図っており、国内法の整備等を随時進めている。また、資源の持続的利用を妨げる IUU 漁業や資源の有効利用を妨げるような活動に対しては、国際的な協力や正確な情報提供等により対応している。
2.本行動計画の対象漁業及び対象種の現状
(1)本行動計画は、サメ類を対象とする又はサメ類の混獲の多い漁業を対象とし、当該漁業により漁獲されるサメ類の種を対象とする。対象漁業及び対象種の現状については、科学者、行政官及び漁業者といった国内専門家からなる専門家グループを定期的に召集し、最新の情報に基づく分析を行う。また、分析結果を踏まえ、管理措置の必要性について検討し、必要に応じて地域漁業管理機関(RFMO)等に提言を行うとともに、本行動計画も改正する。これらの検討に当たっては、以下の事項を考慮する。
 (ⅰ)対象種の生物的特性
 (ⅱ)対象漁業の特性
 (ⅲ)漁業者の安全確保、負担の妥当性
(ⅳ)保存管理措置の社会的・経済的影響
なお、対象漁業及び対象種の現状については、本行動計画の実施状況報告書に詳述し、2年毎に開催される FAO 漁業委員会(COFI)に報告する。
(2)特に、対象種の現状の分析に必要な情報の充実を図るため、以下のデータの収集及びデータ補足のために必要な調査を実施する。
 (a)商業漁船から提出される漁獲成績報告書データ
 (b)国、都道府県、その他に所属する調査船による調査データ
 (c)科学調査員による調査データ
 (d)我が国水揚港における水揚量データ
 (e)国及び都道府県による漁獲統計データ
 (f)研究機関(大学、水族館等)が独自に所有するデータ
3.管理措置
(1)我が国漁業の多くは、漁業法及び水産資源保護法に基づき国あるいは都道府県の管理下にあり、許認可制度により漁業への参入が制限されている。特に、サメ類を対象とするあるいはサメ類の混獲の多い漁業は、ほとんどが大臣あるいは知事許可漁業となっている。我が国は、これら漁業の規模拡大を行う意図はないことから、今後、サメ類資源に対する漁獲圧力が増すことはない。
(2)我が国は、サメ類を対象とするあるいは混獲が想定されるはえ縄漁業の操業海域を管轄している全ての RFMO に加盟しており、これらRFMOの全ての管理措置を我が国の漁業者に遵守させている(別添1)。当該措置を遵守しない等の適格性を有さない者に対しては、漁業の許可・認可を行わないこととしている。今後、新たな措置が導入された場合であっても、これらの措置を遵守させるものとする。
(3)サメ類の魚体を投棄し、ヒレだけを持ち帰ることによるサメ類資源の無駄遣いが国際的に問題とされていることを踏まえ、また、漁獲したサメ類を持ち帰ることによる有効利用を徹底させるため、2008 年に省令を改正し、遠洋かつお・まぐろ漁業、近海かつお・まぐろ漁業及び沿岸まぐろはえ縄漁業を対象として、採捕したサメを所持したときは、日本国外で当該サ
メの一部を陸揚げした場合を除き、当該サメのすべての部分(頭部、内臓及び皮を除く。)を陸揚げまでの間、船上において所持することを義務付けた。また、サメ類資源のモニターの強化を図るため、2008 年に告示を改正したことに伴い、混獲されたサメ類を所持しなかった場合にも混獲情報の報告を義務付けた。
(4)我が国では、唯一、気仙沼を基地とする近海まぐろはえ縄船団が季節的にサメ類を主対象として操業しているが、当該漁業については、操業海域を管轄する中西部太平洋まぐろ類委員会の保存管理措置に基づき、はえ縄漁業管理計画(別添2)を策定の上、2016 年1月より実施しており、今後も継続するものとする。
(5)ワシントン条約附属書Ⅱに掲載されているサメ類(別添3)の輸出許可書の発給の際に必要となる NDF(種の存続を脅かさないという助言)については、2014 年8月に制定した我が国の水棲動物種に対する NDF ガイドライン(別添4)に従って実施する。
4.有効利用の促進
(1)我が国においては、常に一定量のサメ類がまとまって水揚げされる地域では、サメ類が高度に利用されている。即ち、その肉が一般的な料理の食材として利用されるだけでなく、心臓等の部位も珍味として食され、皮も高級革製品の原材料や調理器具として用いられるとともに、骨も医薬品として利用されている。このように、日本では他国と比較してもより無駄のないサメ類利用を行っている状況であり、サメ類の高度利用は国際的にも求められていることから、我が国では引き続きこれを奨励する。
(2)サメ類が主対象ではなく、混獲種として不定期に水揚げされる地域についても、漁獲及び利用実態の把握に努め、その持続的かつ有効な利用を促進することとする。
(3)また、近年、環境保護団体等によるサメ類の持続的かつ有効な利用を妨げるような活動が散見されるが、これらに対しては、正確な情報提供に努めつつ、機会を捉えて反論する。
(4)なお、遠洋まぐろはえ縄漁業等、国内市場から遠く、かつ、長期に渡って操業する一部漁業においては、かつて、魚倉の許容量の関係上、ヒレのみを持ち帰るケースが多かったが、上述の 2008 年の省令改正以降、
サメ類の利用できる部分のすべての有効利用が図られていることが、港における検査等により確認されている。
5.普及・啓発
(1)水産関係者はもとより、広く国民に対して、FAO 国際行動計画及びそれに基づく国内行動計画に関する社会的関心を喚起することは、我が国におけるサメ類資源の持続的利用と保存を推進する上で極めて重要な要
素である。特に、水産関係者に対しては、サメ類資源の管理に対する意識の向上、資源評価のための正確なデータ収集のため、本行動計画を普及し、啓発することが重要である。
(2)このため、具体的に、以下の取組等を実施する。
 ・漁業者を対象としたサメ類の種同定シート等の配布や資源管理に関する講習会の実施
 ・広く国民を対象とした我が国の文化とサメ類資源の関わりについての普及・啓発活動の実施
 ・サメ類資源の持続的利用及び保存に関するパンフレット、ビデオ、ポスター等の作成
 ・漁業者・漁業団体等へのサメ類資源をめぐる国際的な議論の動向に関する情報提供
 ・漁業後継者等に対する教育活動
6.国際協力の推進
(1)2(1)に記載したとおり、本行動計画の実施状況については、FAO・COFI に報告する。
(2)FAO 及び RFMO 等における科学的根拠に基づくサメ類の保存管理を推進するため、当該機関における議論等に積極的に貢献する。特に、サメ類の資源評価においては、我が国の漁業データが大きく貢献している現
状を踏まえ、引き続き正確なデータの提供に努める。
(3)加えて、IUU 漁業は、サメ類を含む漁業資源の保存・管理に関する国際的取組及び各国の努力を著しく阻害するものであることから、これらの漁業の撲滅のため、FAO 及び RFMO 等を通じ関係国との協力を推進す
る。

(別添1)
我が国漁船が行うサメ類の保存管理措置
1.全海域
 まぐろはえ縄漁業者は、採捕したサメを所持するときは、日本国外で当該サメの一部を陸揚げした場合を除き、当該サメのすべての部分(頭部、内臓及び皮を除く。)を陸揚げまでの間、船上に所持しなければならない。
2.各海域
(1)中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)管轄水域(中西部太平洋海域)
 ・ヨゴレ、クロトガリザメの採捕禁止。
 ・遠洋及び近海まぐろはえ縄漁船は、ワイヤー製の枝縄及びハリスを所持すること又は浮球又は浮縄と枝縄とを接続することのいずれかの禁止。
(2)全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)管轄水域(東部太平洋海域)ヨゴレの採捕禁止。
(3)インド洋まぐろ類委員会(IOTC)管轄水域(インド洋海域)ニタリ、ハチワレ、マオナガ、ヨゴレの採捕禁止。
(4)大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)管轄水域(大西洋海域)
 ハチワレ、ヨゴレ、シュ
モクザメ科(ウチワシュモクザメを除く。)、クロトガリザメの採捕禁止。

(別添2)
サメ類を目的とするはえ縄漁業管理計画
1.背景
 気仙沼を基地とする近海はえ縄船団は、日本を代表する近海はえ縄船団の一つであり、漁船の大きさは 119 トンから 150 トンである。彼らは主に、北西太平洋の亜熱帯及び温帯域にある親潮と黒潮とが混じり合う
海域で周年操業している。ヨシキリザメは主要対象魚種の一つであり、漁船団は一般的に、初夏から初秋にかけて、ヨシキリザメを対象とした操業を行っている。
2.管理計画
 中西部太平洋まぐろ類委員会の保存管理措置 2014-05 のパラグラフ2に従い、以下の管理計画が適用される。
(1)計画期間 2016 年1月1日から5年間
(2)対象魚船 気仙沼を基地とする近海浮き延縄漁船(漁船リストは省略)
(3)操業海域  北西太平洋の亜熱帯及び温帯域
(4)はえ縄漁業の許可 近海浮き延縄漁業の操業許可は農林水産大臣により発給される。
(5)年間陸揚げ量上限  ヨシキリザメ:7,000 トン アオザメ:600 トン
 (年間陸揚げ量上限は、歴史的最低水準に設定)
(6)資源が減少している熱帯サメ類の保存措置
 ・シャークラインの使用禁止。
 ・サメの陸揚げはヨシキリザメ、アオザメ、ネズミザメ、オナガザメ類に限定。その他の全てのサメ類は生存を最大化する方法で放流。
(7)その他の措置
 ・ヒレは陸揚げまで魚体に付属させておく。
 ・1m未満のアオザメは、生物学的調査のサンプルとする場合を除き、生存を最大化する方法で放流。
(8)管理計画の報告
管理計画の実施状況は、翌年7月15日までに、中西部太平洋まぐろ類委員会に報告する。
(9)管理計画のレビュー
 管理計画は、本計画の3年目及び5年目にレビューされ、必要があれば改訂される。

以上、PDF資料全12ページ中、P7までになります。P8は(別添3資料)です。
この続きは下記リンク先にてご覧下さい。
※水産庁HP資料より
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