※NHK NEWS WEBより(動画は終了)
世界の海の汚染を進めると懸念されている大きさが5ミリ以下の微細なプラスチックのごみ、「マイクロプラスチック」の最新の研究結果を報告する国際会議が日本で初めて東京で開かれ、研究者はマイクロプラスチックが有害物質を高い濃度のまま沖に運んでいる可能性があると指摘しました。
「マイクロプラスチック」は、プラスチックのごみが海で小さく砕かれたもので、有害物質を吸着しやすく、魚などが体内に取り込むと海の生態系に影響を及ぼすおそれがあると指摘されています。その現状などについて最新の研究結果を報告する国際会議が東京・港区の東京海洋大学で開かれ、各国の研究者やNGOの関係者などおよそ200人が参加しました。
化学物質による海洋汚染を研究している東京農工大学の高田秀重教授は、日本周辺の海のマイクロプラスチックに吸着したPCBの濃度の測定結果を初めて報告し、東京湾の出口と、およそ200キロの沖の太平洋とでは濃度が変わらず、マイクロプラスチックが都市部から沖合に有害物質を高い濃度のまま運んでいる可能性があると指摘しました。
韓国の研究者は、韓国の沿岸でも汚染が進み、ゴカイという生き物が発泡スチロールを体内で細かく砕いて排出し、マイクロプラスチックの増加につながっているおそれがあると報告しました。
このほか、ロシアの研究者は、アジアに近い極東地域でプラスチックごみが多い傾向があり、ことしの夏から、ウラジオストクの沖合で国が本格的な調査に乗り出すと発表しました。
会議に参加した国連環境計画のアレクサンダー・トカーリンさんは、「マイクロプラスチックの問題を多くの人に知ってもらうことが大切だ。各国が協力して、調査や対策を進めるうえで、高い調査と分析の能力がある日本の役割に期待したい」と話していました。
また高田教授は「国際協力による実態の把握を進めるとともに、排出を防ぐ対策のアイデアも共有する必要がある」と話していました。
<PCBなど有害物質を吸着する性質>
マイクロプラスチックは、人の生活や産業活動で出たプラスチックのごみが海で紫外線や波などの影響でもろくなって砕かれ、大きさが5ミリ以下になったものをいいます。石油から出来ているため、油に溶けやすいPCBなどの有害物質を吸着する性質があり、餌と間違ってマイクロプラスチックを食べた生き物への影響が懸念されています。
東京農工大学のグループがベーリング海に生息する海鳥を解剖して調べた結果、胃の中のマイクロプラスチックが多いほど体の脂肪に含まれるPCBの濃度が高くなり、マイクロプラスチックが有害物質を体内に運ぶ役割をしているとみています。
マイクロプラスチックは世界の海で5兆個近く漂っているというNGOの研究者グループによる試算もあります。特に、日本の近海は密度が高く、九州大学が日本近海の56か所で海水を調べたところ、欧米の研究チームが世界各地で調査した合わせて680か所の平均より、マイクロプラスチックの密度が27倍も高いという結果が得られています。
(2016年1月23日 17時53分)
※NHK NEWS WEBより
(2016年1月23日 17時53分)
※NHK NEWS WEBより