気仙沼の近海はえ縄船団復活へ 集団操業に再挑戦 サメ漁守る 経営統合も視野 宮城 毎日新聞 2016年1月19日

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メカジキ 気仙沼
※気仙沼市魚市場に水揚げされたメカジキ

 気仙沼港の近海マグロはえ縄船団が、東日本大震災からの再生に向けて集団操業への再挑戦に乗り出している。震災後最初の取り組みへの国の補助が昨年4月に打ち切られ、漁を中止する船が相次いだが、来年度の新たな取り組みに対し補助の再開が決定。操業の主体となる気仙沼遠洋漁協は一層の協業を進め、老朽化した漁船の代船建造費用を積み立てる計画。船主らは街の復興の鍵を握る漁を守るため、経営統合も視野に入れる。【井田純氏】

 近海はえ縄船はメカジキやフカヒレの原料となるヨシキリザメを主な漁獲対象とし、気仙沼市魚市場の水揚げ金額の2割近くを占め、季節魚のカツオ、サンマの漁期以外も通年で市場を支える柱となってきた。

 震災で被害を受けたはえ縄船が集団操業で再生を図る取り組みに対し、国は2012年4月から赤字の9割を補填(ほてん)する支援策を開始。それまでは漁船間の競争のため、船が満杯になるまで長期間漁を続ける「満船主義」の操業が続いていたが、船主らでつくる遠洋漁協が中心となり、17隻が4グループに分かれての計画的な漁に切り替えた。これにより漁期を短縮してコンスタントに新鮮な魚を水揚げすることで、漁業資源を維持しながら価値を安定させて魚価を上げる計画だった。

 ところが、水産加工業の再建が遅れたことではんぺんなどの材料となるすり身の供給体制が整わず他の魚での代替が進んだことや、環境団体による反対運動で中国のフカヒレ需要が落ち込んだこともあり、ヨシキリザメの価格が低迷。昨年4月の補助打ち切り前後には1キロあたり100〜120円と、震災前の半値程度にとどまった。ある船主は「加工場でさばけないからと、あえて漁獲を控えることもあった」と話す。

 このため、震災前には1隻あたり年1億6000万〜1億8000万円あった水揚げが1億2000万円程度に低迷。この赤字分の補填がなくなったことなどで休漁が相次ぎ、昨春時点での操業継続は13隻に減った。

 新年度に始まる事業は、昨年までと同じ赤字の9割を補助する仕組みで、期間は3年。所有船の老朽化が問題となっている6社の8隻が共同で水揚げ金を積み立て、事業終了後に漁業生産組合を設立して新船建造をする計画となっている。

 6社は4年後の経営統合も視野に入れる。遠洋漁協の斎藤徹夫組合長は「はえ縄漁を続けるために、船主はそれぞれの『のれん』を捨てる覚悟でやっていく。船員育成などの面でも一致して取り組むメリットは大きい」と話す。船体整備、漁具購入などでこれまで以上に協業を進めることで、スケールメリットを生かした合理化を進める考えだ。

 メカジキについては、同市の一般社団法人「リアス観光プラットフォーム」の主導で市内の飲食店などで「メカしゃぶ(しゃぶしゃぶ)」「メカすき(すき焼き)」などの新たなメニューが開発され、観光客の評判を呼んでいる。サメ肉は、市内の加工業者などで作る「サメの街気仙沼構想推進協議会」が需要拡大を図ろうと学校給食へのメニュー提案などを進めている。ともに震災復興の原動力となる商品として、街を挙げてブランド化と消費拡大を図っており、はえ縄漁船の復活への期待は大きい。
※毎日新聞(地方版)より

※関連記事:近海はえ縄漁 集団操業16~18年度も 気仙沼 河北新報 2015年11月26日

※関連記事:気仙沼のはえ縄漁 再生へ スペイン漁業者と連携 MSC認証 ともに目指す 宮城 毎日新聞より 2016年1月20日

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