海水に含まれるDNAで、ジンベエザメの遺伝的特徴がわかる 研究発表

スポンサーリンク

%e3%82%b8%e3%83%b3%e3%83%99%e3%82%a8%e3%82%b6%e3%83%a1%e3%80%80dna

※画像:scienceより

■サメの秘密は海水にも含まれている


世界最大の魚類であるジンベエザメの遺伝的多様性が、少量の海水の分析で明らかにされた。今回報告された「環境DNA(eDNA)配列解読法」は、水中から生物の微量のDNAを抽出する技術で、ジンベエザメ個体群の健康状態に関する有用な情報を推察することができる。

保全生物学者は、野生個体群の遺伝的多様性に関する情報を日常的に利用し、その最適な管理法に関して根拠のある意思決定を行っているが、データの入手は研究対象生物からの侵襲的な組織試料採取に依存する。また、個体群全体を十分に代表するだけの試料の採取も必要であるが、広大な海洋に生息する海生動物ではそれが特に困難な場合がある。

%e3%82%b8%e3%83%b3%e3%83%99%e3%82%a8%e3%82%b6%e3%83%a1%e3%80%80%e3%83%9a%e3%83%ab%e3%82%b7%e3%83%a3%e6%b9%be

※画像、それぞれのジンベエザメの生息域とPC1・PC2の値の違いのグラフ:下記英文記事より、ペルシャ湾は、赤とオレンジの部分

Philip Thomsenたちは、季節になるとジンベエザメが採餌のために群れるアラビア湾(=ペルシャ湾)内海域の30リットル足らずの海水を分析することにより、ジンベエザメの遺伝的特徴に関する有用な情報が得られることを示し、そうした制約を克服した。これにより、当該海域およびインド・太平洋区全体の両方に関して個体群サイズが推定され、湾内のものを含むその個体群は大西洋にみられるジンベエザメと遺伝的に異なっていることが分かった。

過去に水中eDNAの配列解読は水生生物の存在の検知に利用されているが、個体群全体の遺伝的特徴に関する情報の収集にそれが利用されたのは今回が初めてである。ジンベエザメは国際自然保護連合(IUCN)によって絶滅危惧種に指定されており、研究チームはその効率の高いモニタリング技術に関して、ジンベエザメを含む多くの種を保全するための既存のツールの不足を補うことができるのではないかと考えている。

※2016年11月22日のnatureasiaより

※英文記事はこちら

スポンサーリンク
関連