[FT]オーストラリア、サメ撃退技術に力 襲撃増加で 2015年10月2日

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オーストラリア サメ1
※シドニー水族館のサメ。オーストラリアでは2月に日本人サーファーが襲撃された事件を含め、同様の事件が相次いで起こっている=ロイター

 オーストラリアはビーチ観光業界を脅かすサメの襲撃の増加を抑えるために、今後数カ月で世界で最も高度なサメよけ技術の試験に乗り出す。

 2年間で9人の死者が出た後、ニューサウスウェールズ州当局は9月29日、電子的な忌避技術やプラスチックシールド、音波探知機(ソナー)など、サメを検知したり、遠ざけたりする技術を試す計画の概要を明らかにした。
企業もまた、米国などで最近相次いだ襲撃によって高まっているサメよけに対する世界的な関心をうまく利用している。
 科学者たちは、サメの襲撃の増加はサーフィンなどのウオータースポーツの人気の高まりや餌になる魚が岸に近づいている動き、保全努力を受けたホホジロザメなどの大型種の数の回復と関係している可能性があると話す。
「一連の襲撃のために、ダイバーやスピアフィッシング(魚突き)を手掛ける漁師が当社の製品に大きな関心を寄せている」。西オーストラリアの企業シャーク・シールドのリンジー・ライオン社長はこう言う。
 シャーク・シールドはサメの鼻先にあるゼリー状物質が詰まった袋状の器官を刺激し、サメをけいれんさせる電界を発する装置を開発した。ダイバーやスイマー、サーファーは数フィートに及ぶ電界を生み出すために、長さ1.8メートルのアンテナのような装置を足首に取りつける。
 西オーストラリア大学の研究者が行った試験では、シールドがサメよけに「大きな効果」を発揮したことが分かったが、生物の種ごとの効果について確証を持つためには、さらに試験が必要だという。


■サーフボード内部に埋め込む


 装置がかさばるために、シャーク・シールドの採用はこれまで限られていた。だが、同社はサーフィン用具会社オーシャン&アースと装置をサーフボード内部に埋め込む契約を結んでおり、これで人気が高まる可能性がある。
シャーク・シールドの技術は、やはりサメよけ技術を試している南アフリカで生まれた研究に基づいている。昨年、クワズール・ナタール州のサメ委員会はケープタウンの浜辺に長さ100メートルのケーブルを設置した。ケーブルはホオジロザメを遠ざけておくために、似たような低周波の電子信号を発する。
 電子バリアを支持する人は、それがうまくいくことが証明できたら、網に絡めとられる海洋生物を殺してしまうサメ捕獲ネットよりも好ましいと言う。
 「サメ捕獲ネットはサメと海洋生物を駆除する別の方法にすぎない」。サザンクロス大学の海洋生態学者、ダニエル・ブシェール氏はこう言う。「ドラムライン(ドラム缶ブイ)と餌の付いた釣り針を設置するのと似ている」
 昨年、西オーストラリア州政府は地域社会の抗議を受け、サメの駆除政策をやめた。同州の地方自治体はクジーの海岸で「エコ・シャーク・バリア」を試しているコックバーン市とともに代替策を模索してきた。
 「この製品の素晴らしいところは、海洋生物を殺さないこと、コスト効率が高いこと、10年の寿命があることだ」とエコ・シャーク・バリアを発明したクレイグ・モス氏は言う。
 同製品は海底から水面まで広がる柔軟なナイロンでできている。恐らくは、岸からかなり離れ、概してサメに襲われるリスクが一番高いサーファーやダイバー、漁師ではなく、囲まれた海岸で泳ぐ人たちを守ることに最も適している。


■「顔認識ソフトウエアの一種」


 ニューサウスウェールズ州は今年サメの襲撃が13件発生したことを受け、解決策を模索する動きの先頭に立っている。9月29日にシドニーで開かれた会議では、70人の専門家が、衛星技術を利用して識別タグを付けたサメをリアルタイムで追跡する技術など、さまざまな検知、抑止技術について議論した。
 シャーク・アタック・ミティゲーション・システムズ(SAMS)はサメのタグ付けに依存しないサメ検知システムを開発した。同社の「クレバー・ブイ」システムは、ビーチ周辺にソナー技術を配備し、ソフトウエアを使ってサメの大きさの物体が周辺にあるかどうかを判断する。
 「これは海洋生物のための顔認識ソフトウエアの一種だ」。SAMS共同創業者のクレイグ・アンダーソン氏はこう話す。「地元の水難救助員に警告メッセージを送るために、多面的な音波探知技術とソフトウエアを使っている」By Jamie Smyth in Sydney
(2015年10月1日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(翻訳協力 JBpress)
(c) The Financial Times Limited 2015. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
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