サメ肉のサンドはいかが? “魔法の水”でアンモニア臭消えた 淡路島のご当地グルメに 産経ニュース 2015年12月28日

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サメ肉のサンド
※淡路島・由良港で水揚げされたサメ。
左が大きさ約1・3メートルのドチザメ、右はシロザメとみられる=兵庫県洲本市

 関西ではほとんど食べられていないサメを食材として普及させる取り組みが、兵庫県の淡路島で進んでいる。その土地の食材でユニークな料理を作り出す料理研究家の堀田裕介さん(38)=大阪府豊中市=や島内企業が協力し、特殊な処理を施した水でサメ肉独特の臭いを軽減。サンドイッチの具材にして「シャークサンド」を試作したところ「おいしい」と反応も上々だった。関西ではサメは水産資源として重要視されていないが、堀田さんは「サメを使って地域活性化につなげたい」と新たな地方創生の道を模索する。(藤崎真生)

 堀田さんは「食べることは生きること 生きることは暮らすこと」をモットーに、全国各地で地域の生産者と消費者を料理でつなぐ「料理開拓人」として活動している。平成27年には滋賀県でイノシシを解体して食べたり、高松市で調理中に出るさまざまな音を録音し、音楽に仕上げるイベントを手がけたりした。

 淡路島のサメのことを知ったのは26年。島の地域資源を生かして人材育成や雇用促進を目指すセミナーで講師を務めた際、参加した女性から「淡路島ではサメがよくかかるが、水揚げされても捨てられる」という話を聞いた。

 兵庫県水産課によると、県内のサメ水揚げ量は24年13トン。23年17トン、22年18トンと決して多くはない。そんな中で比較的水揚げが多いのが淡路島で、約40隻の漁船を抱える由良港(洲本市)では年間約3~5トンのサメが獲れる。由良町漁業協同組合の中村忠司参事(51)によると「網にかからない日はない」ほどで、食用のドチザメ、シロザメなどが水揚げされる。

 漁師にはおなじみの魚だが、あまり一般に流通する魚ではないため、体長約1メートル以下のものは捨てられるという。取り扱う仲買業者も由良港では1社だけ。業者の男性は「こちらではフカといい、泉州(大阪府南部)に出荷している。淡路島内では食べるところはないのでは」と話す。

 サメといえばすり身の材料やフカヒレというイメージがあるが、一部で肉を食べる文化もある。関西では泉佐野市など泉州方面では「洗い」にして酢味噌(すみそ)で食べるほか、那智勝浦町など和歌山県南部では干物の「いらぎ」として食卓に上る。

 新鮮な洗いは癖のない味が特徴だが、サメは体内に尿素を含んでおり、鮮度が落ちるとアンモニア臭を発するため「広く親しまれた食材」とは言い難い。一方で、尿素が腐敗を遅くする作用があり、山間部などでは冷蔵保存の技術が進んでいない時代に貴重なタンパク源として珍重されたこともあったという。

 そんなサメに堀田さんが本格的に注目したのは、淡路島で開催された27年の同セミナーで、廃棄される魚介類の活用がテーマになったためだ。セミナーには地元・洲本市の水産加工業「武田食品冷凍」も参加していた。

 ワカメや佃煮(つくだに)などの加工を手がける同社は、約20年前から上水道を処理した特殊な水を使っている。水をセラミック片入りのタンク(高さ約1メートル)4個に通し、さらに竹炭入りのタンクに流して濾過(ろか)する。武田康平社長(52)によると、この水を使えば魚介類の鮮度を保てるほか、工場内の掃除に使うと「(周囲の)生臭さがなくなった」という。

 堀田さんは三枚におろしたサメ肉を、同社の水で半日ほどさらした後、低温の油でゆでて調理。身をほぐしてマヨネーズとあえ、ピクルスなどと一緒にパンで挟んだ。「ツナサンド」ならぬ「シャークサンド」と名付けたこのサンドイッチ、9月の試食会では「臭みもなく、鶏のささみ肉に似ている」と好評だった。

 サメ肉を使っているのに臭みがないのは、同社の特殊な水のおかげといい、それは実証実験でも確かめられた。特殊な水で処理したサメと普通の水道水を使ったサメでそれぞれシャークサンドを作って比較したところ、水道水のものだけ臭みが残ったという。

 武田さんは「商品化の際は冷凍のサメを使うことになるため、実験もいつもの状況で試そうと冷凍を使った」と説明。堀田さんはこの水を“魔法の水”と呼んでいるという。

 明治以来の歴史を持つサメ肉加工の先進地、宮城県気仙沼市の業者も、この加工法には注目。同市の水産加工業「中華高橋水産」は、水を使って臭いを取る処理法について「聞いたことがない」としながらも、「アンモニアは水溶性なので、『水の質』が何らかの作用を及ぼしているのかもしれない」と推測する。

 気仙沼港は国内最大のサメ水揚げ量(26年度約9700トン)を誇り、東日本大震災復興策の一環として25年ごろからヨシキリザメが給食の食材として活用されるなど、サメが食べられ始めているという。

 淡路島でもサメが新たな食材になるのか注目される。堀田さんは「シャークサンドはあくまでも調理の見本の一つ」といい、その上で、「今回の加工法がサメ肉を処理する上での新しいスタンダードになれば。現在の技術を活用すれば、淡路島のサメが新名物になれるかもしれない」と可能性を話す。武田さんも「これまで捨てられていたサメを資源として有効活用できるかもしれない。そうなれば漁師の収入増にもつながる」と期待する。
※産経ニュースより

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