シャチのショー廃止 日本にも波及か SankeiBiz(サンケイビズ)2015年11月17日

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シャチ ショー
※米カリフォルニア州サンディエゴの海洋テーマパーク「シーワールド」で行われているシャチのショー。世論の変化と高まる批判を受けて、来年で廃止されることになった=2015年11月9日(ロイター)

 【国際情勢分析】

 11月初旬、米カリフォルニア州サンディエゴの海洋テーマパーク「シーワールド」で、施設の集客の目玉だったシャチのショーが2016年で廃止されることが発表された。この知らせは全米中のメディアを駆け巡り、大きな話題となった。

 米国最大級の人気施設での決定は、和歌山県太地町で捕獲された野生のイルカを水族館で展示するか否かをめぐり、揺れる日本社会にも影響を及ぼす可能性がある。

■「歴史的な大発表」

 このニュースがいかに大きな出来事だったかは米紙の扱いをみるとわかる。

 地元紙サンディエゴ・ユニオン・トリビューン(SDUT)は1面トップで記事を掲載し、記者のコラムで「シーワールドの大発表は歴史的なものだ」と報道。ワシントン・ポスト(電子版)は「象徴的なシャチのショーがまもなく見られなくなる」とし、この決定は施設に対する「世論の批判と高まる圧力の中で」下されたと伝えた。

 シーワールドは、調教師が飼育中のシャチに芸を仕込んで披露する劇場型のスタイルから、シャチの生態をより自然に近い形で観客に見せる形態へと展示方法を変える。この方針転換が注目の的となった背景には主に2つの理由がある。

 1つ目は、親会社が同じであるフロリダ州オーランドのシーワールドで、2010年に調教師がシャチに襲われ、死亡する事故が発生し、大型海洋哺乳類を飼育する施設内の安全性をめぐる議論が起きていたこと。

 2年前にこの事故の真相とシャチの飼育の実態を描いたドキュメンタリー映画「ブラックフィッシュ」が製作され、この映画は著名な映画祭で賞を受賞するなど、高い評価を受けていた。

 2つ目は、動物保護団体が積極的に活動する米国でいま、動物たちの「生きる権利」を擁護しようとする運動が高まりを見せていること。過激団体シー・シェパードもその一つで、米国では、いま水族館廃止運動が勢いを見せている。

■批判高まり入場者激減

 この2つの要因が折り重なって、シーワールドに対する批判の声が大きくなり、施設への入場者数が極端に減少、経営を圧迫する事態が起きていた。

 ニューヨーク・タイムズ(電子版)は「批判のポイントは、人類がいかに動物を扱うかということにある」と指摘。さらに、「サーカススタイルのショーの廃止は必要不可欠だった」との動物保護団体の声明を取り上げ、そうした施設への圧力は、全米の中でもカリフォルニア州で高まっているとの現状を紹介した。

 実際、カリフォルニア州当局は世論の高まりを受けて、この10月、州内で捕獲されているシャチの繁殖を禁止することを決定していた。州の議員はさらに、対象の枠をクジラやイルカなど鯨類全体に広げ、繁殖や野生での捕獲に加え、個体の輸出入を全廃することを求める議案を提出する準備を進めていた。

 ■「飼育自体が間違い」

 SDUTは「社会の見解は、動物の権利を認める方向へ粛々と向かっており、捕らわれた動物の芸を鑑賞することからは遠ざかっている」と指摘。シーワールドはサンディエゴの観光の柱であることから、「シーワールドが現実を受け入れるのが早ければ早いほど、サンディエゴを訪れる観光客の落ち込みは早期に止まる」と解説した。

ロサンゼルス・タイムズ「ショーは海洋哺乳類に対する時代遅れの人間の態度がもたらした残滓である」

 一方、社説で「ショー廃止は変革の開始点であるべきだ」とする見出しを掲げたロサンゼルス・タイムズ(電子版)は「ショーは海洋哺乳類に対する時代遅れの人間の態度がもたらした残滓(ざんし)である」と主張。シーワールドの決定を歓迎しながらも、なおもシャチを飼育する方針を維持する施設の姿勢を批判した。

 さらにロサンゼルス・タイムズは、「野生のクジラははるかに長い距離を泳ぎ、狭い空間に閉じ込めることは適当ではない」とし、シャチの飼育は大きな間違いであることを強調している。

 米国での動きは、じわじわと日本にも波及する。日本の水族館関係者がシーワールドの決定にどう対応し、一方で日本の動物保護団体が今後、どう活動を展開していくのか注目される。
(国際アナリスト EX/SANKEI EXPRESS)
※SankeiBiz(サンケイビズ)より
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