京は水もの:えにし訪ね、ぶらり探訪 10 京都水族館 人工海水でハンディ克服 京都 毎日新聞 2015年11月2日

スポンサーリンク
トラザメの赤ちゃん
※京都水族館公式ツイッターより:トラザメの赤ちゃん。

10cmくらいでかわいいですよ☆小さくてもサメです!

 新幹線越しに東寺の五重塔を望む。新しいものと古いものとが混然一体となった古都・京都を象徴する光景だが、それを背景にイルカたちが高々とジャンプしている姿を見ると、さすがに不思議な気がする。

 JR京都駅に近い梅小路公園一角に2012年3月完成した京都水族館(京都市下京区)。海から遠い京都市内に初めて登場した本格水族館として、連日にぎわいをみせている。

 交通の便がよく、誰もが気軽に立ち寄れる立地も人気の背景だが、内陸型の水族館は大きなハンディキャップを抱える。海の生きものに欠かせない海水が簡単に調達できないのだ。

 そこで取った策が「人工海水」の100%導入だった。塩化ナトリウムなどの塩類を、海水の組成に近いよう混ぜ合わせた「海水のもと」を製造、それを水道水に溶かし海水をつくる。輸送コストを削減し、二酸化炭素の排出を抑え、海辺の水族館にも対抗できるというわけである。

 広大な国土を擁する米国などでは人工海水プラントを持つ内陸型水族館も珍しくない。国内では部分的な導入例はあるものの、大規模水族館での100%人工海水化は初めての試みだった。その量はイルカプールや大水槽など計2500トンにのぼる。

 でも、イルカやペンギンや、タイやヒラメは人工海水で満足なの?

 ぶしつけな質問に広報チームの蔵敷明子さんは「イルカやオットセイやアザラシなど肺で呼吸する生きものと、えらで呼吸する魚たちとは塩分の組成を微妙に変えているんですよ。今のところ、人工海水だから生育に影響があるということはありません」。一方で、「日本で初めて人工海水を全面導入した水族館として、魚種ごとの生育記録を克明に残しています。それは私たちの責務」ときっぱり。

 日本初の水族館は1882(明治15)年に開園した上野動物園の一角に設けられた「観魚室(うおのぞき)」といわれる。10個の水槽を並べ、フナや金魚を泳がせただけの簡単なものだったようだ。

 だが、現在、日本動物園水族館協会(JAZA)に加盟しているだけで62の水族館があり、年間約3500万人が訪れるという。日本は水族館大国なのだ。

 実をいうと、水族館好きという点では京都人も決して例外ではない。

 1897年に神戸市で開かれた第2回水産博覧会に関連し、神戸や京都に水産室・水族室が設けられた。わずか3カ月で閉じられたが「我が国最初の循環式水族館と称してよいものであった」(堀由紀子著「水族館のはなし」岩波新書)という。

 京都市動物園にも1953〜68年、海水水族館が併設されていた。「海から遠く離れた京都でタイやサメが泳ぐ姿を子供たちに見せたい」という市長の願いで、海水43トンを兵庫県明石市から散水車で4日がかりで運んだという。

 梅小路公園での建設を巡り「どうして海のない京都につくるのか」「野生生物を人工海水で飼育してよいのか」などと反対運動があった。京都水族館が「地域に根ざした水族館」を掲げるのは、そうした声に答えようとしたものだろうか。

 蔵敷さんは「水族館は海辺でという概念から解き放たれ、小さい子供らに海や川をより身近に感じてもらえればうれしい」と話す。

 1964年に京都タワーが建設されたとき、「景観を損なう」という批判があった。今はなんとなく、京都のランドマークの位置を占めている。50年後の京都水族館はどんな風に古都となじんでいるだろうか?【榊原雅晴氏】
※毎日新聞より

※関連記事:不気味?かわいい? オオサンショウウオぬいぐるみがSNSで大人気 京都水族館不気味?かわいい? オオサンショウウオぬいぐるみがSNSで大人気 京都水族館

スポンサーリンク
関連