※サメ保護の啓発活動のため国連本部を訪れたアハマト・ハシームさん(左から2人目)らサメの襲撃体験者=2010年9月撮影、ニューヨーク市の国連本部前、ピュー慈善信託提供:時事通信より
【ニューヨーク時事】南アフリカの海岸でサメの襲撃に遭い、右脚の膝から下を失った同国のパラリンピック競泳選手アハマト・ハシームさん(33)がこのほど、ニューヨークでインタビューに応じ、襲われた衝撃と、その後始めたサメを乱獲から守る啓発活動について語った。
ハシームさんは2006年8月、南アのケープタウンの海岸で、水難救助員として訓練中、5メートル近いホホジロザメに遭遇した。弟と同僚の2人と共に水難者の役割を演じるため、互いに一定の距離を置いて海面に待機していると、弟に近寄るサメを目撃。弟から注意をそらすために水面をたたくと、サメはハシームさんに向いた。
間もなく目前で、鋭い歯が並んだ「大きなピンク色の顎」が開き、せり出すのが見えた。「あれほど恐ろしいものはなかった」という。水中に引き込まれ、左右に激しく揺さぶられた。右脚がちぎれたと知ったのは後になってからだ。襲撃の最中、痛みはほとんどなかった。
サメの鼻先を殴ったり、左足で蹴ったりしてけん制を試みた。ざらざらした「さめ肌」の下に筋肉の動きが感じられたという。
映画「ジョーズ」(1975年)で、登場人物のサメ漁師が「(サメの)死んだような黒い目が獲物にかみつく瞬間に白くなる」と語る場面がある。「まさにそれを見た」というハシームさんは「サメの目が見えなくなるその瞬間」を利用して鼻先を押し返し、かまれるのをある程度かわした。救命ボートに引き上げられるまで襲撃は2分間余り続いた。
サメの保護啓発を始めたのは10年。世界規模で保護活動を展開する米NPO「ピュー慈善信託」に招かれたのがきっかけだ。サメが乱獲で生存を脅かされていることを初めて知った。
同信託によると、高級食材のフカヒレ調達といった商業目的で年間約1億匹のサメが殺されていると推定される。ハシームさんは1月下旬、ニューヨークでの国連外交官の集まりで「襲撃の生還者以上にサメの保護を語るにふさわしい者はいない」と啓発に乗り出した理由を明かし、乱獲防止への支持を訴えた。
(2016年2月7日15時5分配信)
※yahooニュース(時事通信)より
(2016年2月7日15時5分配信)
※yahooニュース(時事通信)より