※修復された小谷家住宅に届いた「海の幸」のブロンズレリーフを前に喜ぶ船田さん(前列左から3人目)と地元関係者(12日、館山市布良で)
<館山・小谷家住宅>
明治の洋画家の青木繁(1882~1911年)が、代表作「海の幸」を描いた館山市布良の小谷家住宅(市有形文化財)の修復が完了し、4月から一般公開される。青木や漁家・小谷家の資料などの展示準備が始まっており、屋外には「海の幸」のブロンズレリーフが石の台座付きで設置される。布良地区の象徴になりそうだ。(笹川実氏)
青木繁は1904年夏、小谷家に滞在。漁民の生活を見聞きし、漁民がサメを運ぶ「海の幸」を描いた。その小谷家住宅が老朽化し、2008年、「青木繁《海の幸》誕生の家と記念碑を保存する会」ができ、修復保存のための募金活動が行われてきた。
10年に、全国の画家ら600人が名前を連ねたNPO法人「青木繁『海の幸』会」(川崎市)が発足して募金支援は本格化。昨春、修復工事が始まった。
木造平屋約100平方メートルの屋根や室内を修復し、再生。内部に「青木繁」「布良ゆかりの画家」といったテーマごとに三つの展示コーナーを設け、500平方メートルの敷地の一角にブロンズレリーフを展示する。
レリーフは、彫刻家で元高校教員の船田正廣さん(77)(館山市北条)が、「海の幸」を見た感動を彫刻で追いたいと、3年をかけて2004年に原寸大で完成させた。絵画「海の幸」を所蔵する石橋財団石橋美術館(福岡県久留米市)は、船田さんの独自作品とみなしている。
船田さんがこのレリーフ塑像を提供、韓国の財団がブロンズ5枚にし、うち1枚を台座付きで寄贈した。財団の理事長は、在日2世で韓国・光州市立美術館名誉館長の河正雄ハジョンウンさん(76)(埼玉県川口市)。河さんも小谷家修復に協力した一人だ。ブロンズは搬入済みで、今後、台座取り付け工事が行われる。3月13日にブロンズの除幕、4月29日から小谷家の公開が行われる。
小谷家当主の小谷福哲さん(65)は「美術愛好家の聖地として地域活性化に寄与したい」と話す。「青木繁『海の幸』会」の理事長で、ノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智さん(80)は「『海の幸』が日韓交流の懸け橋として役立ち、大変うれしい」と喜んだ。
ブロンズ受け入れの窓口となったNPO法人「安房文化遺産フォーラム」(館山市)の愛沢伸雄代表(64)は、船田さんのブロンズレリーフが安房西高校(館山市北条)に1枚展示されていることに触れ、「館山で2枚目のレリーフ。文化遺産として次代に残したい」と語る。
※YOMIURI ONLINEより
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