※2015/09/21 に公開、参考動画:ウバザメ
謎に包まれた世界最大級のサメ、ウバザメ。冬に姿を消す彼らの秘密について、「人が見られないものを見る」手段として開発された生物搭載型の小型機械を用いた研究により明らかになった新事実と水産学における今後の展望について紹介します。
■世界で2番目に大きい魚のナゾ
世界最大の魚としてとても有名なジンベエザメ。では、世界で2番目に大きい魚は何でしょうか。答えはウバザメです。ジンベエザメと同じくプランクトンを餌とするこのサメは、海面で餌をとる様子から英語では「ひなたぼっこをするサメ」と呼ばれます。亜寒帯・温帯の海に生息するウバザメは餌となるプランクトンが豊富な春から夏は沿岸域や海面でよく見られるのですが、餌が少なくなる秋から冬になるとどこかへ姿を消してしまうことから、明らかな証拠がないにも関わらず、長年の間「深海で冬眠している」と推測されていました。謎が多く、私たちの興味をかきたてるウバザメは過去には肝油、現在はフカヒレをとるためにたくさん漁獲されたことから数が減っており、絶滅が心配されています。
■追跡 謎の巨大ザメ
魚は水中を移動するため、行動を観察・追跡することはとても難しいとされます。しかし最近では、魚に水温・水深を記録するICメモリー、衛星により位置情報を得る機能を組み込んだ小型装置を取り付け、時間がたつと魚から切り離すように設定することにより、回収した装置からの情報をもとに人が観察できない魚の行動を知ることができるようになりました。この装置をウバザメにも取り付けて、アメリカ西海岸からの移動を調べた結果、ウバザメは冬にバハマ、プエルトリコ、ブラジルのような熱帯海域に回遊していることがわかりました。さらに位置と水深の記録が毎日変化していたことから深海底で冬眠しているという説は否定され、ウバザメは餌を探すために海面から水深約1,000メートルまで自由に移動していることも明らかになりました。
■行動研究の利用とこれから
このように、自動的にデータをとる小型機械を水棲生物に取り付ける方法は、「見えない水中の世界の生物や環境を観察する」ものとして魚の生態や行動を知り、漁業効率の改善、混獲の防止などに生かすことができるとして注目を浴びています。この方法の欠点は機械を回収できなければデータを手に入れられないことです。そのため、最近では時間がたつと生物から切り離されて海面に浮きあがった後、人工衛星経由で情報を送る装置などこの欠点を補う方法が開発されています。小型機械を利用して水棲生物の行動を知る研究は技術の進歩により陸上の生物だけでなく水産学分野で急速に発展しました。また、対象生物はサメ、タイ、サケのような魚からペンギンなどの鳥類、アザラシ、イルカなどの海獣類の他、大型のイカなど幅広く、応用研究も含め今後さらに産業面での活用が期待されます。水棲生物の行動に興味がある人は、水産学から関心を広げてみてはいかがでしょう。
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※マイナビニュースより
※マイナビニュースより
※オーストラリア沖で漁師によって引き揚げられたウバザメ:下記ツイッターFishes of Australia2015年6月23日より
この海域で捕獲されたのは80年ぶり。
体長6.3メートル。オーストラリア南西部ポートランド沖で、トロール漁船の網に偶然引っかかった。
オーストラリアのビクトリア博物館によると、同国沖でウバザメが目撃されたのは過去160年間でわずか3回のみ。最後に捕獲されたのは、1930年代。ウバザメは体長が12メートルに達することもあり、穏やかな性格で知られている。英語の「basking (日光浴をする) shark」という名は、しばしば水面近くで餌を探している姿を目撃されることからつけられた。
Basking Shark parts safely in freezer @museumvictoria, plus stomach contents, tissue samples …@FishesAustralia pic.twitter.com/HM64fnAWU4
— Fishes of Australia (@FishesAustralia) 2015, 6月 23