※米フロリダ州にある水族館「マイアミ・シークアリウム」で、ショーの合間にトレーナーから餌の魚をもらうシャチのロリータ=2015年1月21日(ロイター)
※米ワシントン州のサンフアン諸島
米政府がフロリダ州マイアミの水族館で飼育されている雌のシャチ「ロリータ」を絶滅危惧種保護法の保護対象リストに加える決定を下し、話題となっている。絶滅の危機に瀕している他の野生のシャチと同様に保護を受ける権利を得ることになり、米国の動物愛護団体などは野生に戻すよう主張しているが、45年近く水族館で暮らしてきたロリータが野生の中で生きていけるのか、疑問視する声が強いためだ。
AP通信などによると、政府はこの方針を2月に決定。ロリータのリスト掲載を求める運動を展開してきた動物法律保護基金(ALDF)の代理人、ジェシカ・ブローム氏は「これでロリータは保護される権利を勝ち取った。われわれはロリータが敬意を持って扱われるようあらゆる救済策を要求する(法律上の)権利を得た」と歓迎した。
愛護団体側は、ロリータは水族館の狭いプールではなく、野生の中で暮らすべきだとして、彼女の生まれ育った海に戻すよう主張している。まずはワシントン州北西部のサンフアン諸島沖にあるシャチの海洋保護区にロリータを放し、野生のシャチと一緒に過ごせるようになるまで監視と世話を続けるというのが彼らの考え方だ。
■捕獲されて45年
ロリータは体長約6メートル、体重約3.2トンの雌のシャチ。1970年8月にワシントン州のピュージェット湾で捕獲され、他の6頭の若いシャチとともに売りに出されていたところを米最古の海洋水族館であるマイアミ・シークアリウムが約2万ドルで購入した。
シークアリウムにはロリータのほかにもう1頭雄のシャチがおり、当初は2頭でショーを行っていたが、80年3月にこの雄が死んでからは35年近くを1頭で過ごしてきた。それでも豪快なダイブで客席まで水しぶきを飛ばすロリータのショーは人気のアトラクションで、今も子供たちを喜ばせている。
ただ動物愛護の活動家らは、捕獲動物によるこうしたショーを問題視。2013年以降、ロリータを他の野生のシャチと同様に絶滅危惧種保護法の適用対象にする運動を展開してきた。
ロリータは飼育されているシャチでは世界最高齢で、ピュージェット湾のシャチが05年に絶滅危惧種に指定されて以降、保護対象リストに載せられていない唯一の個体となっていた。米海洋大気庁(NOAA)も最終的に「捕獲された動物だからといって法と別枠の扱いにはできない」と判断。動物愛護団体側の請願を認めて、ロリータのリスト入りを決定した。
■自力で餌取れるか
ただ、シークアリウム側はロリータの“解放”には応じない構えだ。ロバート・ローズ館長は「ロリータを海に放つ計画はない」とした上で、ピュージェット湾のシャチの保護にこそ政府は努力を払うべきで、水族館で長く養われてきたシャチを野生に戻しても問題解決にはつながらないと訴えた。
もっともこうした主張は行政側もよく理解している。絶滅危惧種保護法は捕獲された動物の飼育までは禁じていないため、NOAAは今回の決定でロリータが水族館を出なければならなくなることはないと説明。ロリータを海に放す決定を下す場合には、餌を自力で取っていけるかや野生の群れに病気をうつす恐れはないかなど、さらに広範な検討を行う必要があるとの見解を示している。
ただ動物愛護団体側は、日よけのない狭いタンクに閉じ込めることや仲間と隔離することは絶滅危惧種保護法違反に当たり、今回のロリータのリスト掲載によって水族館から解放する足がかりができたと主張している。近く次の一手を繰り出してくる構えで、今後の展開から目が離せない。
※2015/02/06 に公開、マイアミ海洋水族館
米フロリダ(Florida)州のマイアミ海洋水族館(Miami Seaquarium)で飼育されているシャチが、絶滅危惧種の保護対象に指定される見通しがあることがわかった。同国当局が4日発表した。ロリータという名のシャチは、40年以上を同水族館で過ごしてきたが、同種の野生のシャチは絶滅危惧種になっている。だがこの指定も、特に状況に変化をもたらすような拘束力はないため、活動家らは引き続きロリータの解放を求め続けるという。(c)AFP